ミャンマー移民の生活と教育 2019年調査報告

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内容

調査地について 1
調査協力NGO:FRY(Foundation for Rural Youth)について 2
面接調査について 4
FRYが支援しているミャンマー人コミュニティ 7

調査地について

2019年12月にバンコク北部のエカチャイ・バンボン区でミャンマー人支援を行うNGO:FRY-Foundation for Rural Youthに協力を依頼し、ミャンマー家族に聞き取り調査を実施した。

FRYスタッフに寄れば、このバンボン区には多くのミャンマー人家族が居住している。多くはバンコクに隣接するサムットサコン県マハチャイから移住してきた人たちである。民族的にはタイヤイ族、カレン族、モン族などである。

周辺に缶詰工場やエビ加工工場があり、そこで働く者が多い。24時間活動の工場で働くものも多い。

調査協力NGO:FRY(Foundation for Rural Youth)について 

●FRYの概要

 FRYは1985年に創設された。当初は東北ロイエット県で生活や教育に困難を抱える青少年支援から活動が始まった。

2009年にタイに移民児童が増加したので、バンコクで移民児童支援を始めた。ロイエットには2人在住し、環境保全、森林保護などを実施。環境省から予算が来る 

●移民児童への支援

 教育アクセスと法的アクセスを支援する。2002年に政府通達が出て、タイ人児童と同じ教育を受ける権利を持つと規定は明文化されたが、実態は権利が守られていない。

●学習教室の運営

 教員はタイ人3人、ビルマ人2人

成人クラス、幼児クラス、小中学校クラスがある

成人クラス 

(1)タイのカリキュラムに準拠したノンフォーマル教育(成人識字学級):日曜に成人の移民労働者たちにタイ語を教えている

バンコク市からの識字学級への援助(一人80バーツ)

(2)ミャンマーのカリキュラムに準拠したノンフォーマル教育

 ミャンマーから試験のためにここに担当が来る
 ミャンマーカリキュラムでの予算はミャンマー政府が出す

幼児クラス 

  年少クラス20人 4-5歳11ヶ月、年長クラス15人 5-6歳11ヶ月

小中学校クラス(タイとミャンマーのカリキュラム双方を使用)

  45人 7歳から15歳 教員3人
  9時から3時までの時間割
  1ヶ月の学費を徴収 400バーツ 二人だと600バーツ
  民間や個人から寄付をもらっているが、多くはない
  送迎もしている、送迎車を使う(イトー財団寄贈)1日200バーツでレンタル

写真 FRY提供

給食:ミルク提供

  ミャンマーカリキュラムでの予算はミャンマー政府が出す

  ユネスコプロジェクトで150台のタブレットを寄贈される  

  3ヶ月に1回保護者会をする。問題がないか、特別指導が必要か話し合う。家庭訪問もしている

  多民族構成なので異文化交流、異文化料理交流をする

  ターク県メソード郡のサンチャオ小学校と交流している(全校生徒600人のうち100人がミャンマー人の学校)

  本年度、タイの公立小学校へ入学したのは、年少8人、年長4人、小学校5人だった

   ミャンマー語で話をする

写真 FRY提供

面接調査について
 面接したのは10人のミャンマー人の母親。NGOスタッフにミャンマー語の通訳をお願いし、5人で一グループとなりグループインタビューを行った。

●母親達のプロフィールまとめ
 年齢は27歳から45歳
子どもは2人から5人、他人の子どもを預かっている人もいる
 縫製、製紙工場など工場勤務者が8名、専業主婦が2名
 モン州出身のモン族、パオ族、ヤカイン族などが多い。ビルマ族、ロヒンギャ族もいる。全員仏教徒
 タイ在住歴:8年から23年で長期滞在している、時々年中行事や冠婚葬祭時に帰国するものが多い。先だって郷里の寺にタンブンをしに帰ったという動画をスマホで見せてもらった。

No.1. 27歳
子ども2人(4歳:自宅、5歳:FRYでまなぶ)
 家内工業(縫製)の小さな工場の宿舎で10人一緒に暮らす
 家族は夫と子ども二人、夫も工場で働く
給与は出来高払い。夜8時から10時くらいまで働くこともある
 8-9年タイに住む。モン州から来ており今自宅を建設中、そのお金を得るためタイで働いている。

No.2. 40歳
 知人の子ども(7歳)を預かって育てている
 子どもの親は建設現場で働く
 家族7人
 縫製の会社に勤務 モン州出身 タイ人の友人はいない

No.3. 42歳
 子ども5人, 1人目20歳. バンカディの工場勤務
二人目16歳,お兄さんと同じ工場勤務, 3人目13歳、FRYで勉強,
4人目 9歳ミャンマーの親戚宅に預けられる, 5人目5歳 FRYで勉強
 夫はいない(離婚)モン州出身 パオ族

No.4.40歳
 子ども1人 子ども6歳 FRYで学ぶ
 縫製工場勤務 エラワディ出身 ビルマ族
 夫は塗料工場勤務
 男性 23年間タイにいる
 
No.5. 36歳
ヤンゴン 出身
 タイに13年、子ども1人 娘10歳

No.6
 家に5人 弟 おい 夫はミャンマーにいる
 縫製会社 夫はミャンマーで物を売っている

No.7 37歳
タイに15年、 子ども2人 10歳娘 6歳男
 4人家族 夫と子ども二人
 専業主婦
 夫はCNCの会社
 17歳の子は仕事をしている。建設現場で働く。ミャンマーでP4まで勉強

No.8. 45歳
 バンボンに10年住む。その前はエガチャイに住む
タイヤイ語,ミャンマー語が話せる
 タイに9年住む。夫はいない。下の子と一緒にいる上の子はバン(ミャンマー?)にいる 
17歳ミャンマーで働いている ホテル勤務 M1まで学びその後働く
 下の子は小6。サンチャオ小で学んでいる。卒業したら勉強したいタイの学校で。
 →ラッタナコシン中学進学

No.9. 37歳
タイに10年いる
子ども2人 男12歳 女6歳
 4人家族 夫と子ども2人
 靴の工場で働く、夫は建設現場

No.10. ウィンウィンマー 38歳
子ども3人 17歳 11歳 6歳
夫と下の子とも二人と暮らしている。一番上は別に暮らしている(タイ)
専業主婦 夫は紙工場

面接結果

Q家事は誰がするか?
 母親が食事を作るばあいが多いが、補助的に夫も作る場合もある。かならず女性が行う仕事とは意識されていない。
例「いつもは自分でタイ料理をつくる、夫がたまにつくる」
「自分が料理をつくる、夫は作れない」
Q学校との関係
 FRY(学校)によく来るか?という質問に対して、よく来るとの回答が多かった。FRYは保護者に信頼されているようだ。ミャンマー語の話者スタッフもおり、コミュニケーションが円滑にできることが重要である。
 サンチャオ小学校が、ミャンマー児童たちを受け入れている学校である。
「サンチャオ学校に行ったことがあるか」との質問には、かなりの頻度で行っている。しかし、どの程度教師とコミュニケーションを行いどのくらい密接な関係があるのかは今回の面接からはわからない。
【注】サンチャオ小学校という名前がなかなか出てこない母親もいる。関心はうすいということか?
 
Q子どもの家庭での教育指導
 「宿題の手伝いをするか?」という問いに「自分で手伝えない」という答えだった。タイ語に不自由な母親たちのため、宿題の手伝いはできないようだ。子どもが自分で宿題をやっているようだ。

Q子どもの将来への希望:
「子どもを将来どの段階まで学校に行かせたいか?」という質問に最も多い回答は「子ども次第」「子どもは言ったことがないから知らない」という答えだった。(将来を決定するのは子ども自身だという価値感も関与しているかもしれない。)
子どもと将来のことについて話したことのある親も少ない。
同じ質問に対しては、「できるだけ高等教育を受けさせたい」、「できれば大学に行かせたい」、「いい学校に行かせたい」という回答もあった。しかし親たちは具体的な学校名やその学校に入るためにどうしたらいいかという回答はない。ばくせんと希望があるということを表明しただけの親が多い。
 「Q将来どんな仕事を子どもにさせたいか?」 という質問に対しても、同様にばくぜんとした「夢」を語っているうだ。一様に「まだ考えていない」「子ども次第だ」と答える。 一人だけ「医者」という回答もあったが、医者にするためにどの学校に進学する必要があるのかといった具体的な段取りは分かっていない。
 「小学校高学年になったらミャンマーに返してミャンマーの学校に入れたい」と答える親もいたが、これも漠然とした「夢」を語っているようである。
 
Q仏教寺院に行くか:信仰行動
 まったく寺に行かないものが半数。後半数は月1または2回また3回いくとの回答だった。

Q言語使用
子どもとはミャンマーの母語(カレン語、モン語、ビルマ語、シャン語)で話すと答える親が多い。家庭内コミュニケーションは母語である。タイ語と母語は似ていると答えるが、流ちょうにタイ語を話す親はいない。またタイ語がある程度話せても読み書きができる親はいない(FRYのスタッフ談)。
子どもとは母語とタイ語で話すことができる。親はタイ語ができないので学校から何か通知・連絡が来たときには子どもに読んでもらうという

Q携帯電話の使用
全員スマホを持っている。ミャンマーとスマホでやりとりしている。FBはみな使う。インターネットでニュースをみる。郷里の寺にタンブンに行ったビデオを見せてもらう

FRYが支援しているミャンマー人コミュニティ
 2019年12月23日にFRYが支援しているミャンマー人コミュニティを4ヶ所訪問した。
1.バンコク西部バンクンティエン区
https://goo.gl/maps/p1i3fBp2igQSP7SB7
家賃1500-2000バーツ (光熱費込)
モン州出身の人のコミュニティ、魚加工工場がある

2.1の近くのコミュニティ バンコク バンクンティエン区
https://goo.gl/maps/rgjFzGX84EhmXR169
ヤカイン州出身の人のコミュニティ

3.ミャンマー人の市場(バンボン区)
https://goo.gl/maps/aoQcWbiHK4AHpUmKA
ダウェイ出身の人が商売をしている

市場写真 筆者撮影

ABCアパート(バンボン区)
https://goo.gl/maps/kMPEnsHWsVF8SynX6
500部屋2000人のミャンマー人の住む巨大アパート

出典:Google ストリートビューより

住民の99%はミャンマー人。(隣接してタイ人新興住宅地があるが交流全くなし)
家賃約1500バーツでほとんどは近郊の工場で働いている。

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研究所について

このサイトでは私が今まで行ってきた日本と海外(主にタイ)でのボランタリー活動についての研究・調査の紹介をしています。タイをフィールドとした教育調査は約30年になりました。

This website introduces my research and studies on voluntary activities I have conducted in Japan and abroad, mainly in Thailand. I have been conducting educational research in Thailand for about 30 years.