留学生の貧困:無料食料支援から分かったことその2

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留学生の貧困:無料食料支援から分かったこと(その2)

 2022年9月30日に第11回目のユニティ食料支援プロジェクトを実施しました。そのとき、8月のプロジェクトでも行ったアンケートを再度実施しました。その結果を8月の結果と比較しながら整理しました。

 

 前回の報告でも述べたように、毎回受け取りに来る学生では留学生が多いです。なぜたくさんの留学生が食料を受け取りに来るのでしょうか?留学生は日本人学生より貧困度が高いのでしょうか?今回も留学生の回答を日本人学生と比較ながら見ていきたいと思います。

調査の概要


 2022年6月から9月までのアンケート調査回答者数が下の表です。表のように留学生はだいたい日本人の4割から3割です。学園都市の学生総数1万2千人、留学生は約1000人です。学生総数うち12分の1しかいません。やはり留学生の利用率は高いと言えるでしょう。

 

6月27日7月25日8月25日9月30日
日本人学生の回答数49人57人40人64人
留学生の回答数41人32人19人32人

 

留学生:リピーター率が高い

 ここでは、今まで食料配布に4回以上来た学生をリピーターと呼ぶことにします。下のグラフのように、留学生は8月9月とも31%で日本人学生よりかなりリピーターが多いです。それだけ留学生には食料配布に対するニーズが高いことを示しています。

 

食生活 :1日3回食べる?

 「今日までの1週間で、だいたい1日に何回食事を食べましたか?」という質問への回答で、「2回食べる」「1回食べる」の合計が下の図です。

 まず日本人学生は1日3回食べないで、「だいたい2回食べた」「だいたい一回食べた」の合計は42%となります。ところが留学生は3回食べない学生が69%にもなります。留学生は1日の食事回数を減らしている学生が、日本人学生よりもずっと多いのです。
 1日2回または1日1回しか食べない学生に、「3回食べない理由」の質問への回答では、日本人学生は「時間がない:38%」で最も多いです。次に多かったのが「習慣でそうしている:24%」でした。留学生は「食欲がない:26%」で最も多く、ついで「お金がない」「時間がない」「習慣でそうしている」の三つがそれぞれ21%となりました。回答傾向が8月と異なるので、今後も調査したいと思います。

食生活:食費はどれくらい?

下の図は、一ヶ月の食費(外食費や食料購入費など)を聞いた回答を示したものです。留学生も日本人学生も「一万円から2万円未満」という回答が一番多く、8月調査とほとんど同じです。全国大学生活協同組合連合会による全国の学生1万人を対象とした2020年「第56回学生生活実態調査」によると、自宅外学生(下宿生)の1ヶ月の食費は2万4千円です。従って、食費は全国平均と余りかわらないと思われます。

ユニティでやってみたい活動は?


 この食料支援プロジェクトは、開始した当初から、将来的にユニティを拠点とした学生同士あるいは学生と地域との交流のきっかけづくりになることを目標にしてきました。
そこでアンケートで「ユニティでどんな活動があれば参加してみたいですか?」を質問しました。その回答が下のグラフです。日本人と留学生と比較すると、明らかに留学生の方がどの活動に対しても積極的な関心を示していることが分かります。留学生の回答で最も多かったのが「留学生を対象とした日本文化講座」です(47%)。留学生は学生同士の交流や地域住民との交流についても30%以上の回答率となっています。

おわりに:留学生のつながり支援の必要性
 

今までの調査から留学生のかかえる困難が明らかになりました。8月調査では留学生の「経済の貧困」が明らかになりました。留学生は日本人学生に比べて、家庭からの仕送りも少なく、アルバイト収入をアパート代、食費、学費に回し、ゆとりのない生活をしています。今回の9月調査でも同じような傾向が見られました。
 しかし、9月調査の「ユニティでやってみたい活動」は留学生が困難な生活状況にあっても積極的に日本人や地域とつながりをつくろうとする意欲が高いことを示しています。
 ある意味で留学生は日本人学生以上に「つながりの貧困」があるかもしれません。食料支援に来ている留学生たちに困っていることはと尋ねると、日本語が難しくて日本人と話せない、日本の友だちが作りにくいなどと話してくれます。
 これからユニティでの交流を実現させることで、こうした「つながりの貧困」の解消への糸口が作れ、それがさらに「経済の貧困」の解決に結びついてくれるよう方策を考えたいと思います。

智雲ボランタリー活動研究所

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このサイトでは私が今まで行ってきた日本と海外(主にタイ)でのボランタリー活動についての研究・調査の紹介をしています。タイをフィールドとした教育調査は約30年になりました。

This website introduces my research and studies on voluntary activities I have conducted in Japan and abroad, mainly in Thailand. I have been conducting educational research in Thailand for about 30 years.