留学生の貧困:無料食料支援から分かったこと その3

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 2023年4月27日(木)今年度初めてのユニティ食料配布を実施しました(今年度は8回配布予定です)。約100名の学生に食料を配布することができました。いつものように食料配布時にアンケート調査を実施し、総数86名の回答がありました。集計結果の要約は次のようです。

 1.学生の「孤食」が顕著です。「この一週間で誰と夕食を食べたか」尋ねたところ、日本人も留学生も圧倒的に「一人で食べた」という回答が多いです。

 2.留学生は1日の食事回数が少ないです。「今日までの1週間で、だいたい1日に何回食事をしましたか?」尋ねたところ、日本人はだいたい3回が一番多くて57%、2回が43%です。留学生は逆に2回が一番多くて66%、3回は29%しかありません。

 3.留学生は食費を節約しています。1日2回または1回しか食べない学生に、その理由を複数回答で尋ねたとことろ、日本人と留学生の大きな差が見られます。日本人は45%が「時間がない」で最も多く、ついで「お金がない」が23%です。他方、留学生は「お金がない」が45%で最も多く、ついで「時間がない」が27%です。

 4.学生たちは外食しないでつつましく自炊をしているようです。学生に「外食の頻度」を聞いたところ、「月2~3回」という回答が日本人も留学生も最も多いです。

 5.学生に食事の内容では極端に偏った食事をしている学生は少ないようです。ごはん、パン、麺などは留学生も日本人も「毎食」または「毎日」食べています。そのほか「野菜」「豆、味噌、豆腐」「肉」「牛乳」も尋ねましたが、毎日食べているようです。

 以下では集計結果を項目ごとに少し詳しく見てみたいと思います。

56人もの多数の留学生が受け取りに来ています。流通科学大は全員留学生でした。

❏留学生の日本滞在歴

留学生の日本滞在歴を聞いてみると、1年以下が過半数を占めます。おそらく新一年生の留学生がたくさん取りに来たのでしょう。

❏情報入手先

食料配布の情報入手先です。情報発信に協力してくれている大学がメールで知らせているので「メール」という回答が多いようです。メールが重要な情報源です。県立大は「友人からの紹介」が多いです。

❏住まい方

学生たちの住まい方は、アパート一人暮らしか学生寮・国際寮です。「寮」がある県大と流科大の留学生の多くは「寮」に住んでいます。日本人のほとんどは「アパートに一人住まい」です。

❏留学生の食生活

学生に「この一週間で誰と夕食を食べたか」聞いたところ、圧倒的に「一人で食べた」という回答が多いです。日本人学生も留学生も「弧食」が一般的のようです。「食べなかった」という回答も留学生3名、日本人1名います。十分に食事が取れていないのではと心配です。

「今日までの1週間で、だいたい1日に何回食事をしましたか?」への回答です。日本人学生と留学生で大きな違いが見えます。日本人はだいたい3回が一番多くて57%、2回が43%です。留学生は逆に2回が一番多くて66%、3回は29%しかありません。留学生には5%(3名)のだいたい1回という回答もあります。この3名に理由を複数回答で尋ねたところ、「ダイエットのため(2名)」「お金がない(1名)」「宗教上の理由(1名)」「時間がない(1名)」という回答でした。1日一回しか食べないで大丈夫かと心配です。

                     

1日2回または1回しか食べない学生に、その理由を複数回答で聞いた回答です。ここでも日本人と留学生との大きな差が見られます。日本人は45%が「時間がない」で最も多く、ついで「お金がない」が23%です。他方、留学生は「お金がない」が45%で最も多く、ついで「時間がない」が27%です。留学生の経済的困窮が食生活に表れていることが分かります。なお「宗教上の理由」と回答する留学生が8%(5名)います。これは食料配布の日と,今年のラマダン(断食月)が一部重なったためと思われます。
学生に外食の頻度を聞いた回答です。「月2~3回」という回答が日本人も留学生も最も多いです。逆に「週に2~3回」「週に4回以上」という回答は,日本人も留学生も少ないです。学生たちは外食しないでつつましく自炊をしているようです。なお、統計的には日本人と留学生に回答傾向に大きな差は見られません(χ2検定:p値: 0.067)
学生に食事の内容と頻度を聞いた回答です。ごはん、パン、麺などは留学生も日本人も同様に「毎食」または「毎日」食べています。そのほか「野菜」「豆、味噌、豆腐」「肉」「牛乳」「テイクアウト弁当」も尋ねましたが、どれも回答傾向に留学生と日本人に統計的な違いは見られませんでした(χ2検定:p値> 0.05)。極端に偏った食事をしている学生は少ないようです。

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